
(株式投資アナリティクス編集部)
もともと日本は超高齢化社会によって年金制度の先行きに不透明さを感じている人が多く、老後の資金を確保する目的で資産運用に興味を持つ人が増えてきていましたが、コロナ禍によってそういった人はさらに増えるでしょう。
資産運用のなかでももっともメジャーなのが株式投資ですが、本記事では武田薬品工業について株価が今後どうなっていくのか分析していきます。
企業・ビジネスの特徴
基本情報
武田薬品工業は1925年に大阪で設立されました。売り上げの9割は医療用薬品となっていて、糖尿病治療薬、高血圧の治療薬、がん患者への治療薬などが主力製品です。近年では胃潰瘍や逆流性大腸炎に効果のある「タケキャプ」やうつ病の治療薬「トリンテリックス」をはじめとした新製品が好調で、2015年度に一度赤字になった業績を回復させています。とはいえ、赤字になった原因は訴訟に対しての和解金なので、業績が悪化したというわけではありません。アステラス製薬、大塚ホールディングス、第一三共、エーザイとともに日本の薬品会社では大手企業に位置しており、医薬品業界のなかでは日本でトップの売上高を誇っています。直近では2019年にアイルランドの製薬会社大手「シャイアー」を7兆円で買収したことが大きな話題になりました。
これによって武田薬品工業の売上高は3兆円を超えることになり、日本のトップというだけではなく、世界の医薬品メーカのトップ10に入る規模にまで拡大しています。今後はこの買収によって業績がどのように変化するかが注目すべき点のひとつといえるでしょう。
事業計画
武田薬品工業は主にふたつの大きな事業計画を打ち出しています。ひとつめは新薬の研究開発です。製薬会社が業績を今まで以上に伸ばすためには新薬の研究開発がある意味必要不可欠です。特にがん、消化器系疾患、中枢神経系疾患といった分野に効果のある新薬開発の研究に力を入れるとしています。これらの分野は特に重要度が高いため、研究開発をすることによって、武田薬品工業の社会貢献度はまずます高まっていくことでしょう。
そして、事業計画のもうひとつの大きな柱が、グローバル展開です。現在でもアメリカやヨーロッパをはじめ世界70か国以上に事業展開をしており、実は売上高全体の6割が海外との取引によるものとなっていますが、今後は特に新興国に力を入れて更なる事業拡大を目指すとしています。最終的には日本トップの製薬会社ではなく、世界でもトップクラスの製薬会社になることを目指して事業展開をすると「ビジョン2025」という事業計画にも打ち出しています。
強み
武田薬品工業の強みは何と言っても不況に強い、という点です。特に注目しておきたいのがリーマンショックにあたる2009年か2010年にかけてで、この時期はトヨタやソニーといった名だたる大企業も赤字に転落していましたが、武田薬品工業は減益とはなっているものの、大幅な黒字を確保しています。
直近の主要な動向
武田薬品工業の最近の動向で触れなければいけないもののひとつが、シャイアー社の買収です。7兆円という巨額の買収だったこともあり、買収をおこなった2019年には巨額の支払いと借り入れが発生し、財務体質に大きな変化が表れていることには注目しておいたほうがよいでしょう。武田薬品工業の自己資本率は現在約37パーセントとなっています。自己資本率は30パーセント以上で普通、40パーセント以上で優良となっているので、武田薬品工業の自己資本率は普通の水準だといえるでしょう。今のところそれほど心配することはありませんが、今後の業績には注目しておかなければいけません。いっぽう無形固定資産は約65パーセントとなっており、そのうちシャイアー社をはじめとした記号買収によるものとなっています。
もうひとつ近年の大きな動きとして、「武田コンシュマーヘルスケア」の売却です。武田コンシュマーヘルスケアは「アリナミン」をはじめとして私たちに馴染みの深い大衆薬事業を手掛ける子会社でしたが、米投資ファンドのブラックストーン・グループへ売却することを決定しました。この売却はシャイアー買収による資金難ではなく、大衆薬事業から撤退することが目的としています。
今後の株価推移予想・投資判断
武田薬品工業の着金の株価推移を見ていくと、直近2年間を見ておくと、株価は下落傾向にあります。2018年末ごろまでは4500円を維持していましたが、その後下落し、2020年にはリーマンショックを乗り切った武田薬品工業もコロナショックによって3,000円を割り込んでしまいました。その後は反発して株価が上昇したのですが、また下落に転じています。最大の理由はやはりシャイアー社買収の効果が不透明であるという点でしょう。この買収によって武田薬品工業の資金面は悪化したことは明白です。
一般的に株価が下がった時はその銘柄は買い時だとされてはいますが、武田薬品工業に関しては売れ筋の新薬が開発できていなかったり、シャイアーにお買収効果がまだ出ていないというように不安要素が高いということもあって、現状は様子見しておいたほうがよいでしょう。しかし今後一気に上昇する要素は十分あるので、直近の動向はこまめにチェックしておいたほうがよいでしょう。
投資する上で想定される当社の事業リスク
武田薬品工業へ投資する上で考えられる事業リスクですが、やはりシャイアー社の買収による影響はしっかり注視していく必要があるでしょう。この買収によって、有利子負債は5兆円規模にもなっています。つまり多額の借金をしているということになり、この借金は返済していかなければなりません。
シャイアー社がもくろみ通りの利益を出してくれれば問題ないですが、業績が振るわなかった場合は一気に窮地に追いやられる可能性があり、株価にも当然影響してくるでしょう。そして新薬を積極的に開発するのは良いことですが、新薬には思わぬ副作用が発生し、訴訟を起こされるというリスクも背負います。今の武田薬品工業の財政状況で大規模な訴訟を起こされてしまうと、株価の大幅な下落は避けられません。
まとめ
武田薬品工業が、日本最大手の製薬会社です。2019年にアイルランドの大手製薬会社シャイアー社を買収したことにより、世界の医薬品会社トップ10にも入りました。
今後についてですが、現在はシャイアー社買収の効果がまだ不透明であるうえに買収で多額の負債を抱えているため財政状況は良いとはいえません。株価は下落しているものの、シャイアー社買収の効果が出るまでは様子見しておいたほうがよいでしょう。