【2021年最新版】信越化学工業の株価は今後どうなる?今が買い時?

(株式投資アナリティクス編集部)

信越化学工業は生活に密着する多くの製品の素材を製造する化学メーカーです。新型コロナウイルス感染拡大の影響を株式全体が受けた際には株価が急落しました。

しかしその後の各種素材の世界的需要に変化はありません。これを受けて信越化学工業の株価も堅調です。反面、上昇していた株価に高止まり感もあります。そのような信越化学工業株の買い時は何時でしょうか。

企業・ビジネスの特徴

信越化学工業株式会社は東京都千代田区大手町に本社を置く化学メーカーです。東京証券取引所と名古屋証券取引所で一部に上場されています。東証一部上場銘柄の中から時価総額と流動性の特に高い30銘柄で構成された株価指数であるTOPIX Core30の一つです。主力商品には塩化ビニル樹脂、半導体シリコン、シリコーン樹脂、希土類マグネットなどがあります。特に塩化ビニル樹脂と半導体シリコンのシェアは世界トップです。また国内ではシリコーン樹脂がトップのシェアを誇っています。信越化学工業が得意とするのは様々な原材料の素材を加工して化学製品として販売することです。化学業界では原材料の価格に売上げを左右されやすい課題があります。そのような業界で安定した収益をあげているのが信越化学工業です。

信越化学工業には六つの特色ある事業があります。塩化ビニル樹脂・化成品事業、半導体シリコン事業、シリコーン事業、電子・機能材料事業、機能性化学品事業、加工・商事・技術サービス事業です。中でも、塩化ビニル樹脂・化成品事業と半導体シリコン事業で収益の半分を得ています。特に塩化ビニルは構造が単純な上に生産が簡単です。安価で丈夫なことから代替えする新素材が出現し難い特徴があります。単純な素材であるが故に多数存在する競合他社との差別化が難しい商品です。そんな中で信越化学工業は営業力と納期厳守、安定供給の体制を維持し続けることによって差別化して高いシェアを維持しています。その結果、塩化ビニル樹脂・化成品事業の収益が全収益の約三分の一となっているのです。

また、信越化学工業の連結売上高比率の約四分の三は海外になります。中でも最初に進出した米国における100%子会社シンテックは米国最大の塩化ビニルパイプメーカーです。
もう一つの大きな事業、半導体シリコン事業では全収益の約四分の一を上げています。半導体シリコンとは半導体の基盤材料であるシリコンの結晶を薄くスライスしてできるシリコンウエハーのことです。信越化学工業はこのシリコンウエハーの生産でも世界一位のシェアを誇っています。シリコンウエハーはスマートフォンや家電など、今の私たちの生活に欠かせない機器に使われている半導体の基盤となる材料です。シリコンウエハーの原材料は、ふんだんに存在するケイ素であることから資源の心配がありません。

その他の事業でも信越化学工業は生活に欠かせない素材を生産しています。電子・機能材料事業で生産しているのがレア・アースマグネット、フォトレジスト、液状フッ素エラストマー、光ファイバー用プリフォームなどです。レア・アースマグネットはエアコン用コンプレッサーなどのモーターに使われています。フォトレジストはシリコンウエハーに半導体回路を転写するときの感光材料です。液状フッ素エラストマーはスマートフォン画面のコーティング剤、光ファイバー用プリフォームは最終的に光ファイバーに加工されます。シリコーン事業で生産しているのが日常生活のさまざまな場面で使用する合成樹脂シリコーンです。

直近の主要な動向

直近の報道から米国のバイデン新政権が巨額の財政出動をする可能性が予想されます。これによる景気浮揚が狙いです。現在米国では新型コロナの影響による景気の冷え込みが懸念されています。これに対して米国政府は直接投資を再開する可能性が大です。信越化学工業の米国子会社シンテックは約1,300億円を投じて米国に住宅や水道管などに使う汎用樹脂生産のための新工場を建てることを発表しました。この工場は塩化ビニル樹脂や苛性ソーダの生産を担います。塩化ビニル樹脂と苛性ソーダの国際的需要を踏まえたものです。

また将来の自動車の電動化に備えてEV・HEV向けに熱対策に優れた低密度・低硬度放熱シリコーンパッドと低硬度・高復元性放熱シリコーンパッドの2種類の開発に成功しました。これによってリチウムイオンバッテリーの使用される部位や凹凸のある発熱素子の放熱などに優れたさまざまな製品の生産が可能になります。
一方で直近の連結経常利益は前年の同期と比較して10%減り、売上げ営業利益率は昨年同期の27.9%から26.5%に低下しています。

今後の株価推移予想・投資判断

昨年第3四半期に13,945円を付けた株価は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた株式全体の急落を受けて3月24日には8,957円にまで下落しました。しかし、その後世界的に需要が堅調な半導体関連企業として新型コロナウイルス感染の影響下においても1万8千円台に上昇しています。さらに米国においてバイデン新政権に期待されているのが巨額の財政出動です。

また国際的に塩化ビニル樹脂や苛性ソーダの需要が見込まれています。全体として主力製品の需要は新型コロナウイルス感染拡大に大きく影響を受け難いものです。また今回の決算発表前に株価の上昇に変動は少なく、直近では高値水準で推移する傾向が見られます。そのため、調整局面を迎えたタイミングでの買いを狙っていきたいところです。米国における増資が業績に貢献し、株価上昇に好材料となりそうです。

投資する上で想定される当社の事業リスク

2021年3月期の連結決算は新型コロナウイルスの影響を受けて売上高1兆904億円となり、前年同期に比べて836億円の減収です。第1四半期は新型コロナウイルスの影響を大きく受けました。しかし、第2四半期以降は需要が徐々に回復。12月期には主力である塩化ビニル樹脂・化成品事業と半導体シリコン事業分野の市場における需要と復調が進んでいます。

株価は、2021年1月27日に発表された米国子会社シンテックの大型投資の報道とバイデン政権による財政出動の期待からやや上昇基調です。投資に好感を持たれたことが大きく影響していると予測されます。ここまで株価は右肩上がりで上昇していますが今後調整期を迎える可能性があります。

まとめ

信越化学工業の特徴について直近の第4四半期決算をもとに解説しました。信越化学工業は株価が上昇トレンドにあります。米国子会社シンテックの大型投資による収益には期待できます。

新型コロナウイルスの影響下においても得意とする事業は堅調に推移しています。ただし、株価が上昇して高止まり感があります。買いのタイミングは下落局面を狙うなど、工夫が必要です。