【SDGsとESG投資の関係性】投資家はSDGs実現へESG投資で貢献すべき

こちらの記事は以下のように考えていらっしゃる方に読んでいただく意義があります。

  • SDGs/ESG投資とはなにか
  • SDGs/ESG投資の関係性がよく分からない
  • 投資かとしてSDGs/ESG投資をどう捉えたらよいか

昨今の大きな投資トレンドの一つとして、SDGsと密接な関係を持つESG投資への関心が高い水準に達しており、個人投資家でもSDGsに貢献できるESG投資を実践できる手段が増えています。

もちろん、利益を上げることが前提条件になるとは思いますが、ESG投資実践によってSDGsへ貢献するという姿勢は、グローバル市民として重要です。

以下で詳しく説明していきます。

SDGs(持続可能な開発目標)の概要

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出典:外務省

SDGsとは、”Substainable Development Goals”の頭文字を取ったもので、日本語では「持続可能な開発目標」と呼ばれます。

SDGsは国連で採択されたもので、国連加盟国193か国が2030年までに達成することを目標として設定されました。SDGsは17の目標に加えてそれを細かく分けた169のターゲットで構成されてます。

17の目標は、大きく3つのタイプに分かれます。

①世界中の人々が平等かつ安全な環境で生活するためのゴール

①平等かつ安全な環境を実現
  1. 貧困をなくそう
  2. 飢餓をゼロに
  3. すべての人に健康と福祉を
  4. 質の高い教育をみんなに
  5. ジェンダー平等を実現しよう
  6. 安全な水とトイレを世界中に

最初の6項目で目標は、新興国を中心に世界中の人々が平等かつ安全な環境で過ごす世界の実現を掲げています。

具体的には貧困を失くすこと、貧困から起こる飢餓を防ぎ、全ての人が健康な生活を送れる環境を整えること、平等に高い質の教育を行うこと、性別による差別を失くすこと、安全な水を使える環境を整えることが挙げられます。

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日本に住んでいると実感が湧かないかもしれませんが、新興国においては平等と安全の実現はまだまだ途上で、大きな課題です

②より良い産業・社会を実現するためのゴール

②より良い産業・社会の実現

 7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
 8.働きがいも 経済成長も
 9.産業と技術革新の基盤をつくろう
 10.人や国の不平等をなくそう
 11.住み続けられるまちづくりを
 12.つくる責任 つかう責任

7~12個目は産業に関わる目標が中心となっています。

具体的には、クリーンなエネルギー確保、仕事に働き甲斐が感じられる環境の整備、産業革新のための基盤づくり、国家間の差別解消、住みやすい街づくりの実行、安定した消費と生産のサイクルを確立することが挙げられます。

先ほどの1項目目~6項目目は主に新興国に関わるものですが、こちらは日本をはじめとする先進国も対象になります。

③地球の環境保全を実現するゴール+α

③地球の環境保全を実現

 13.気候変動に具体的な対策を
 14.海の豊かさを守ろう
 15.陸の豊かさも守ろう
 16.平和と公正をすべての人に
 17.パートナーシップで目標を達成しよう

そして、最後に13~17個目は地球全体の自然に関わるものが中心となっています。

この項目では、陸・海両方の豊かさを守り、気候変動に対する対策を行うこと、人々が平和に暮らすための制度を整えることが掲げられています。

またSDGsを達成するために、パートナーシップを結んでいる国連加盟国全体が目標達成のために努力することが、全体の指針として明確化されています。

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要しますと、現代において世界中で見られる共通の社会課題に対して、世界各国が一丸となって解決していこう、という意思の統一と認識の共有を図るのが、SDGsの大上段の目的です

なぜSDGs(持続可能な開発目標)が掲げられたのか?

2010年代に入る前から、先述した課題や目標は、世界中で注目を浴びていました。既に注目されていた内容が今になってSDGsで再度注目されるようになったのか疑問に思っている人も多いと思います。

SDGsの前身は「MDGs(Millennium Development Goals)」です。元々MDGsは新興国・発展途上国向けのものであり、先進国を巻き込む仕組みになっていませんでした。

そこで上記のMDGsが改正されてSDGs(持続可能な開発目標)になり、先進国が関わる内容も含まれるようになったことでSDGsが注目され、政府や大手企業がこれを実現するための取り組むようになりました。

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背景には、先進国の協力なくして新興国・発展途上国の社会課題解決は困難、という思想があります

SDGs(持続可能な開発目標)への大学・企業の取組事例

昨今、企業によるSDGsへの関心は非常に高まっています。

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さまざまな大企業に関わらせて頂いている私の実感としても「SDGsで掲げる課題にどう貢献するか」という考え方は、確実に根付き始めています

そのような中で、国内の企業や大学で多岐に亘る取組みが実施されています。

SDGsの取組事例①:上智大学

国内トップレベルの私立大学として知られている上智大学は国際的な活動に力を入れている大学として知られています。

上智大学では、毎年6月上旬と国連デーである10月24日近くに「上智大学国連Weeks」を設定し、上智大学に通う学生が「国連の活動を通じて、世界と私たちの未来について一緒に考える」をテーマに写真展など様々な企画を実行しています。

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上智大学国連Weeksは一般の人にも公開されており、国連が取り組んでいるSDGsの内容を一般の人にも知ってもらうきっかけとなっています

SDGsの取組事例②:株式会社昆虫食

次に株式会社昆虫食では、地球全体の人口増加に伴うたんぱく質の供給不足を防ぐために、持続可能なたんぱく源の開発・研究を行っています。

そして、たんぱく質不足の解消のために提案したのが「昆虫食」です。昆虫はたんぱく源が豊富であり、肉に代わるたんぱく源として期待されています。

そこで株式会社昆虫食が提供する「entomo」では昆虫を使った製品・レシピの普及を目標に活動しています。

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食料の調理技術・保存技術が進歩し昆虫を美味しく食べることができる方法が紹介されています

SDGsの取組事例③:伊藤忠テクノソリューションズ

仕事・働き方に関連する内容では、ITソリューション大手で知られている伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が挙げられます。

CTCでは人材開発・育成に加えて、タイバーシティの推進と介護・育児休暇の確保など家庭と仕事を両立しやすい環境の整備を行っています。

また、特にAI技術の進歩に伴い、早稲田大学ととの共同研究活動、AI人材育成ソリューションの提供といったAI技術を使いこなせる人材の育成に力を入れています。

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それに加え、テレワークや社員のジーンズ・スニーカー出勤のガイドライン制作など働き方改革に伴った働き方の自由度の向上も推進しています

SDGsの取組事例④:公益財団法人神奈川県公園協会

また住みやすい環境づくりの例としては、公益財団法人神奈川県公園協会が挙げられます。

神奈川県公園協会では、公園を大人から子供まで、多様な人が使う憩いの場とし、公園が神奈川県民の健康維持のための場・安らぎの場となるように管理を行っています。

また、なかなか公園に来られない人でも手軽に公園に来ることができるように、授乳スペースを設置したり、車椅子の貸出をしたりもしています。

SDGsとESG投資の関係性:「SDGsで掲げるゴールを実現する一助となるのがESG投資」

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出典:GPIF

昨今、機関・個人の別を問わず投資家の間でもてはやされている投資手法の中に、ESG投資があります。ESGとSDGsは似た概念に思えますが、関係性はどうなのでしょうか?

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端的に言うと「SDGsで掲げるゴールを実現する一助となるのがESG投資」という関係性です

ESG投資のESGとは「Environment・Social・Governance」の頭文字を取った言葉です。ESG投資とは環境問題・社会問題の解決に取り組んでいて、ガバナンス・内部統制が効いている企業に対して投資することを言います。

最近では、ESGへの取組みが不十分だったため米国の電力ガス大手・PG&Eが整備ミスで山火事を起こし最終的に経営破綻に至りPG&Eの株主は大損を喫しました。

こうした無用な損失を回避する意味合いや、そもそも機関投資家を中心にSDGs実現、社会的課題解決の貢献への気運が高まっている中、投資家は環境・社会に対して配慮しながら運営されている企業に投資すべきと考えられています。

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こうした気運を受け、ESG/SDGsに係わる投資は注目を浴びており、関係する投資信託やETFが多数生まれています

ESG投資/SDGsへの関心の高まり

こうした背景を踏まえて、ESG投資/SDGsへの関心は高い水準にあります。米国のモルガンスタンレー証券が実施した調査では、「ESG投資へに関心を持っている層が8~9割にまで高まっている」との結果が出ています。

1)サステナブル投資に関心を持ち、実践する層は増え続けている
投資家の85%がサステナブル投資に関心を持ち、ミレニアル世代では95%が関心を持っている。投資家全体の52%、ミレニアル世代の67%が、特定の環境・社会課題に取り組む企業やそれらを含むファンドへの投資など、少なくとも1つのサステナブル投資を実践している。

2)投資家は自分の関心に合った商品を求めている
投資家全体の84%、ミレニアル世代の90%は、投資を通じて目標の達成にインパクトを与えられるようにしたいと考えるとともに、インパクトに関する報告を求めていることも明らかになった。

3)サステナブル投資への信念が、収益に対する懸念を上回る
投資家の86%は、ESGの実践が企業収益の向上につながり、長期投資に有利に働く可能性があると考えている。88%の投資家は環境・社会課題へのインパクトと投資収益は両立できると考えている一方で、64%の投資家は投資収益と持続可能性とのどちらかを選ばなければならないというトレードオフ的な考え方を持っていることを認めている。

4)投資家は、より多くの選択肢を求めている
投資家の65%は、選択できる投資商品の少なさがポートフォリオの中でのサステナブル投資の実践にとって障害になっていると捉えている。

出典:HEDGE GUIDEMorgan Stanley

ESG投資のやり方:投資信託の購入

このようにESG投資やSDGs(持続可能な開発目標)への関心が高まるなかで、ESGやSDGsを投資テーマにした投資信託の新規設定が相次いでいます。

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出典:日経新聞

こうした投資信託の購入をすることで、個人投資家でもESG投資を実践することができます。

ESG投資のパフォーマンス評価:利益を得られるのか?

ESG投資の関心が高いのは事実ですが、投資家としては、「ESG投資のパフォーマンスはどれくらいか?本当に利益を上げられるのか?」という点ですね。

結論から言うと、現時点ではESG投資のパフォーマンスは、通常の投資手法に比べて大きな優位性は見られないようです。

既存学術研究のサーベイによれば、総じていえば、ESG 投資パフォーマンスは、どちらかというとポジティブとする研究が多いものの、一方で通常投資と有意な差はない (もしくはネガティブ)として相反する結果を示す研究もみられ、その見方に統一的 な見解を見いだせていないと考えられる。

出典:東京大学公共政策院

また一方で「何を以てESG投資のパフォーマンスの評価とするか」についてはまだ統一見解が無く、議論が続いています。

一方で、巨額の資金を運用するGPIFがESGの観点で優れる企業に投資を開始するなど、ESG重視の企業の株価が将来的に向上する可能性があります。

新たな取り組みとしては、株式を対象にした「ESG指数」の採用があります(詳しくは「グローバル環境株式指数を選定しました」参照)。

企業が公開する情報などをもとにESGへの取組みを見て銘柄を組み入れる株価指数を5つ(総合型2つ、特定のテーマ型3つ)採用し、それぞれの指数に連動するパッシブ運用を開始しています。

出典:GPIF「ESG投資」
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現時点ではESG投資にパフォーマンス上の優位性はそれほどありませんが、長期的な視点で見れば、ESGに優れた企業への投資が進み、結果として株価が向上する可能性があります

投資家としてのSDGs/ESG投資への考え方:ESG投資は社会貢献の意義あり

これまでSDGsの概要やESG投資との関係性、そのパフォーマンスについて触れました。

当ブログや本記事をご覧いただいている方は、個人投資家が多いと思います。投資家としてSDGs/ESG投資へどう向き合うかは一つの大きな問いです。

投資家として利益を追求するのであれば、パフォーマンスを踏まえると敢えてSDGs/ESG投資に注目する必要性はありません。

しかしながら、投資家としてSDGsで掲げるゴールや社会課題の解決に貢献するという意志を持つのであれば、SDGs/ESG投資を実践すべきです。

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個人投資家を含めた投資家がSDGs/ESG投資へ一定の資金を振り分け、SDGsの達成にわずかながらでも貢献していくべき、と考えています

いきなり投資の意思決定での主眼を変えるのは難しいので、例えば、「ESG投資を実施する投資信託も選択肢に入れる」「同じパフォーマンスの投資信託だったらSDGs/ESG投資を優先する」といった考え方もあります。

まとめ:ESG投資を通じてSDGsの実現へ貢献

SDGs(持続可能な開発目標)について解説してきましたがいかがでしたでしょうか?

昨今では、ESG投資/SDGへの関心が高い水準に達しており個人投資家でもSDGsに貢献できるESG投資を実践できる手段が増えています。

もちろん、パフォーマンスが良く利益を上げられることは前提条件になるとは思いますが、ESG投資実践によってSDGsへ貢献するという姿勢は、グローバル市民として重要です。