
こちらの記事では、累進配当政策を対外的に公表している銘柄について紹介しています。
最近、ごく一部の上場企業が宣言して話題になっている累進配当政策ですが、気になっている方も多いのではないでしょうか。
累進配当政策は、単に毎年連続で増配している企業を指すのではなく、対外的に「減配しない」と宣言している配当政策と定義されます。
つまり、コロナウイルスによって業績不振であっても、配当水準を維持することになり、投資家にとってはメリットが大きい政策です。
現時点で、累進配当政策を取っている企業は、「三井住友フィナンシャルグループ」「三菱商事」「いちご」「伊藤忠商事」の4社です。
減配がない累進配当政策は、企業にとっては非常に重大なコミットメントである一方で、株主にとっては非常に魅力的です。

現在は4社のみですが、将来的に累進配当政策を宣言する企業は増加していく可能性が高いです
※投資は自己責任でお願い致します
累進配当政策とは何か?
そもそも累進配当政策とはなんでしょうか?聞きなれない方に向けて解説します。
累進配当政策=配当を減らさない資本政策
「累進配当政策」とは、「減配せず、配当水準を維持または増配し続ける」資本政策を指します。
配当は通常、「1株あたり100円」といった形ですが、この「100円」の金額水準を減らさず、維持または累進的に増加させる、ということを意味します。
ただし、どの企業も「特定の中期経営計画期間中」という枕詞付きですので注意が必要です。
つまり、例えば「2019-2021年度の中期経営計画は累進配当政策をとる」というようにコミットメントをするため、その期間を過ぎた場合は、累進配当を継続する保障は無いという意味です。

対象の中期経営計画の期間が終了した場合、「累進配当政策やめます」となる可能性があります
累進配当政策は事業と株主への強いコミットメントを示す素晴らしい政策
累進配当政策は、言い換えると「何があっても配当は減らさず株主に還元し続ける/還元を増加させ続ける」という、経営からのメッセージです。
これは自社事業と株主還元に対する、非常に強い対外的なコミットメントと言えます。
配当金は業績が悪化した場合に減配するのが通例です。減配することで自社の財務状況や留保を一定に保ちます。
しかしながら、累進配当政策を対外的に発表している場合は、減配することができません。例えば、2020年のようにコロナ影響によって業績が急速に悪化しても、減配ができない状況に陥ります。

従って、自社事業を安定的に操業する強い覚悟と、業績が悪化しようがしまいが株主還元を変わらず継続するという強い意志が必要になります
累進配当政策は、購入時の配当利回りが保証され株主にとっては魅力的
一方で、累進配当は、株主にとっては非常に魅力的な政策です。
なぜなら、累進配当政策を取る銘柄に投資した株主にとっては「買った時点の配当利回りが下限として保証される」という意味を持つからです。
どういうことでしょうか。
例えば、累進配当政策を取る企業を株価100円で、1000株購入したとします。配当は1株あたり5円だとすると利回りは5%です。
累進配当政策を取っていれば「1株あたり5円」の部分が5円未満になりません。
従って購入した株式を売買せずに保有し続けたとすると、利回り5%を下回ることは無くなります。

こうした銘柄が株主にとって魅力的であることは、論を待たないですね
累進配当政策を掲げる4銘柄
現在、累進配当政策を打ち出している企業は5社あります。
累進配当株①三井住友フィナンシャルグループ:累進配当はいつまで?

三井住友フィンシャルグループは、三井住友銀行、SMBC日興証券、三井住友カードなどを子会社に持つ金融コングロマリットです。
メガバンクグループの一角でもあります。
三井住友フィナンシャルグループは累進配当政策を取っており、資本政策の基本方針の中で明確に謳っています。

過去の配当状況を見ても、減配が無く累進配当を継続しており、今後も配当を維持・増加させていく計画です。
配当性向は40%を目標にしており、2019年度は目標範囲内で収まっていたものの、2020年度はコロナ影響による業績悪化で65%ほどを見込んでいます。
業績はコロナ影響がありながらも安定しており、2020年度は連結純利益4000億円を予想しており、国内でも有数の収益を誇ります。
中期経営計画は2022年度までなので、累進配当政策も2022年度までは取り続けることになります。

柱の銀行事業は、貸出事業によるストック型の安定ビジネスであり、累進配当政策を取ることができるバックボーンとなっています。
三井住友フィナンシャルグループについては以下の記事で分析していますので、宜しければご参照下さい。
▼内部リンク▼
三井住友フィナンシャルグループの株価や事業動向。投資先としてどうか?【大型株の銘柄分析】
累進配当株②三菱商事:累進配当はいつまで?
2つ目の銘柄は、総合商社トップの一角、三菱商事です。
総合商社として、資源ビジネスを中心に広範囲の事業を展開しています。
三菱商事も、中期経営計画の中で、累進配当を方針として掲げています。ただし、現在コミットしているのは2021年度まで、という点は留意が必要です。
『中期経営戦略2018』において、株主還元は配当を基本とし、減配せずに利益成長に合わせて増配していく「累進配当」を方針として掲げました。
出典:三菱商事「配当情報」
2019年度より開始される『中期経営戦略2021』においても、「累進配当」を継続し、配当性向は現在の30%から将来的に35%程度に引き上げていくことを目指します。
2015年度からの推移を見ると、年間の配当金は着実に増加を続けています。減配は一度もされていません。

しかしながら、2020-2021年はコロナ影響により資源事業、自動車事業が低調に推移しているため業績が悪化、2020年度は純利益2000億円と大幅な減益で着地する計画です。
以下は、三菱商事の業績推移です。


2021年度までは累進配当にコミットしているので、減配の心配はありませんが、コロナウイルスのような不確実性を目の当たりにし、 2022年度以降も累進配当を継続するか否かは 不透明ですので、注意が必要です
累進配当株③いちご:累進配当はいつまで?
3社目はいちごです。冗談のような企業名ですがれっきとした上場企業です。
J-REIT運用を柱とした不動産サービス業、およびメガソーラー等の再生エネルギー事業を展開しています。
社名は、千利休が説いた茶人の心構えである「一期一会」に由来し、「人との出会いを大切に」という精神を理念としているそうです。
累進配当政策については、以下の通り公表しています。
当社は、2017年2月期より「累進的配当政策」を導入しております。各年度の1株あたり配当金(DPS)を、原則として前期比「維持か増配」のみとさせていただき、「減配しない」ことにより、当社の盤石な安定収益基盤が可能にする「安心安定配当」を実現いたします。
累進的配当政策とは、株主に対する長期的なコミットメントを示す株主還元策です。
株主還元の基準としては「配当性向」が一般的ですが、短期的な利益変動に左右されてしまうため、将来の配当水準は必ずしも明確ではありません。
原則として「減配なし、配当維持もしくは増配のみ」を明確な方針とする累進的配当政策は、持続的な価値向上に対する企業から株主様へのコミットメントと言えます。
出典:いちごWebサイト「株主関連情報」
業績は、コロナ前までは増収増益で推移しており、配当も累進配当政策を掲げていることから、毎期増配を続けていましたが、足許では減収減益となっています。
【いちごの業績推移】


いちごは2030年までの長期経営計画を掲げており、他企業のように累進配当の期間が明確化されていません。従って、業績動向によっては突然に累進配当政策を中止する、というリスクが潜んでいます
累進配当株④伊藤忠商事:累進配当はいつまで?

4社目は伊藤忠商事です。かつての3大商社を追い抜く勢いを見せている総合商社ですが累進配当政策を執っています。
現行の中期経営計画期間中である2020年度中まで、2018年度の1株当たり74円を下限とすることにコミットしていました。
実際の配当状況は以下の通りで、コロナ下でも好調な業績を踏まえ、2020年度も増配を実現する計画です。

毎期史上最高となる配当額を目指すとのことで、配当増額によるインカム・キャピタルゲインの増加が期待できます。

伊藤忠商事の累進配当政策の機嫌は2020年度ですが、次期中期計画において累進配当政策を継続するかどうかは注目のポイントです
ご参考:累進配当株を中止した日本エスコンは発表後に株価が急落
日本エスコンは、同社はマンション分譲や商業施設などの開発を手掛ける不動産業者です。
2019年度までの中期経営計画を期限として、累進配当政策を公表していましたが、コロナ影響など先行きが不透明な情勢を受けて、2020年度の中期経営計画からは累進配当政策を中止しました。
当社は、2016年11月より配当政策の方針として累進的配当政策(1株当たりの配当額を前年度の1株当たり配当額(DPS)を下限とし、原則として「減配なし、配当維持もしくは増配のみ」とする配当政策)を導入し継続してまいりましたが、先行きが極めて予測困難な状況下であることから、内部留保の一層の充実を図る必要があると考え、「累進的配当政策」を見直し、取り下げることといたしました。
なお、配当性向については30%以上を維持いたします。
配当政策については、株主様への還元を最重要とする方針についてはこれまでどおり変更せず、現在の環境を勘案し内部留保の確保に重点を移しながら、配当とのバランスを留意し、持続的な企業価値の向上及び最大化を図ってまいります。
出典:日本エスコンwebサイト
経営として、苦渋の判断だったことは想像に難くないですね。
2020年7月30日の大引け後に上記をプレスリリースした後、株価は▲12.4%と急落しました。


投資家からすれば、配当利回りの保証がなくなってしまったので株が売られて株価が下がるのは当然です。 累進配当政策を踏まえて長期保有する際にはこうしたリスクを考慮に入れる必要があります
累進配当政策と「疑似累進配当(連続増配)」の違い
「減配せず、配当水準を維持または増配する」ことに明確にコミットするかどうか、が累進配当と連続増配の違いです。
累進配当政策の対外的な公表は、つまり上場企業の「経営層」が「株主」に対して絶対に守ると約束する行為に他なりません。
これは覚悟の面で非常に大きな差異があります。
もし累進配当を約束して、実現できなかったらその企業や経営者は批判に合うことは必至です。株価も下がる可能性が高いです。
そういったリスクがあるにも関わらず、株主にコミットするには揺るぎない自社事業への自信・覚悟と株主還元への意思が必要になります。

結果的に連続増配となっている企業(花王、NTT、NTTドコモ、キャノン、JTなど)は多数存在しますが、コミット度合いに大きな違いがあります
連続増配企業については以下の記事でまとめていますので、宜しければご参照下さい。
▼内部リンク▼
連続増配中の日本株おすすめ一覧 – 厳選5銘柄
連続増配については、日本国内よりも米国に一日の長があります。以下の記事では、米国の連続増配株についてまとめていますので、宜しければご参照ください。
▼内部リンク▼
連続増配中の米国株ランキングトップ10!最長の企業は何と60年超え!
累進配当政策を取る企業に対しては買いスタンス
ここまで、累進配当政策を取っている企業を紹介し、それ以外の企業との違いを見てきました。
結論として、累進配当政策を掲げる銘柄は、積極的に購入検討をしても良いのではないかと思います。
理由はこれまで述べてきた通り、
- 持続的な配当継続により安定したインカムゲインが得られる
- 背景にある安定した事業構造でディフェンシブ株として優れる
- 積極的な株主還元姿勢を示しており自社株買い等が期待できる

上記により、株価も比較的安定して推移することが期待できます
累進配当政策銘柄におけるおすすめの株式保有方針
中長期の保有がおすすめです。理由は明快で、累進配当政策を取っている限り、配当利回りが下がらずその分株価下落リスクが低減されるためです。

ただし、株式を購入するタイミングは熟慮する必要があります
累進配当政策を巡る将来的な予測:コロナが収束した後に宣言する企業が増加する
コロナが収束した後には、累進配当政策を宣言する上場企業の増加が見込まれます。
累進配当政策は国内では2016年頃から導入された制度であり、前述の三井住友フィナンシャルグループや三菱商事が先駆けです。
この10年ほどの株主重視のトレンドを鑑みるに、今後このような株主還元強化の方向へ動く可能性は高いと言えます。

特に、連続増配実施中の企業は累進配当政策を取る可能性が高く、その場合は株価上昇が期待できます
累進配当までは行かないものの連続増配を長年継続する企業は多数
対外的に減配しないことをコミットする累進配当政策には及ばないものの、長い間連続で増配を続けている累進配当政策に近い銘柄は多数存在します。
- 花王(連続増配期間:31年)
- リコーリース(連続増配期間:26年)
- SPK(連続増配期間:23年)
- 小林製薬(連続増配期間:22年)
- 三菱UFJリース(連続増配期間:22年) 等
上記の企業は全て、コロナウイルスの影響下にも関わらず増配を宣言している素晴らしい銘柄です。
以下の記事では、そんな連続増配中の日本株のおすすめをまとめていますので、宜しければあわせてご参照ください。
▼内部リンク▼
連続増配中の日本株おすすめ一覧 – 厳選5銘柄
【無料】永久に保有できる米国株の超優良な高配当株6銘柄
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まとめ:累進配当政策を取る銘柄は魅力的!
累進配当政策について紹介しつつ、資本政策に織り込んでいる企業4社について解説しました。
累進配当政策は極めて株主に寄り添った方針であり、投資先としては魅力的です。将来的に同政策を掲げる企業が増えていく可能性も高いです。
ただし如才なきことながら、企業の経営状況やテクニカル面での分析は併せて実施した上で、投資判断をする必要があります。
ぜひ投資先の候補として検討してみてください。

皆様の株式投資ライフが充実したものになるよう、祈念しております