
(株式投資アナリティクス編集部)
NTTと言えばよく耳にしたことのある名前だからと、株で投資するのを検討している人もいるでしょう。しかし大企業ゆえに、細かい事業内容や経営状況などがいまいち理解されていないことも考えられます。
株で投資を考えている場合、その企業のことを知ることは非常に重要です。そこでNTTの企業の概要や事業内容を紹介した上で、最新の決算を見ながら今後の株価の推移を予想していきます。
企業・ビジネスの特徴
NTTは主に通信事業を展開している大手企業です。もともとは日本電信電話公社という特殊法人でしたが、民営化によって1985年に日本電信電話株式会社すなわちNTTになりました。NTTは、国が発行済株式総数の3分の1以上の株式を保有している特殊会社になります。本来単にNTTと言う場合は、この日本電信電話株式会社のことを指し、通信事業を主体とする企業全体はNTTグループと呼びます。現在NTTは、NTTグループの株を保有する持株会社となっています。
NTTグループにはNTT東日本とNTT西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTドコモ、さらにNTTデータ、NTTコムウェア、NTTファシリティーズ、日本電信電話の8社があります。これらの資産規模や人員数、顧客の数、取引先の数などを考慮すると日本最大級の企業だと言えます。
それぞれの企業の事業内容を簡単に挙げていきます。まずNTT東日本とNTT西日本は電気通信事業になります。具体的な主なサービスは電話や電報、インターネット回線のフレッツです。ほとんどの人が固定電話やインターネットの光回線として利用したことがあるでしょう。NTTコミュニケーションズは、長距離通信や国際通信の事業を行っている企業です。具体的な提供サービスは、インターネットサービスプロバイダであるOCNとOCNモバイル、フリーダイヤルなどがあります。NTTドコモは携帯電話の無線通信サービスを提供している会社です。主な事業内容として、Xiなどのモバイル通信サービスやドコモ光、dカードやd払いなどの金融・決済サービスなどが挙げられます。
ここまではほとんどの人が知っているだろう事業を紹介してきましたが、ここからはあまり知られていない事業内容を紹介していきます。まずNTTデータは、主に官公庁や金融向けシステムの開発を行っています。NTTコムウェアは、ユーザー系システムインテグレーターです。具体的にはNTTグループ内のシステム開発を主体としていて、さらにAIなどの研究や開発も行っています。NTTファシリティーズは組織系建築設計事務所・エンジニアリング企業になります。主に通信設備の建築を行っていて、世界トップレベルの技術を持っていると言われています。他にも郵便局や病院なども建築しています。エンジニアリング事業としては、空調制御システムや新電力の設立や運営に関わっています。その他ここには記載しきれない程のたくさんの事業を手掛けています。どれも安定した業績の企業なので、優良銘柄と言えます。
直近の主要な動向
NTTの2020年11月6日付けの2020年度第2四半期決算について解説していきます。連結決算状況は、営業収益が5兆7114億円で前年に比べて1782億円減っています。営業利益は1兆86億円で、前年に比べて258億円の増加になります。収益の減少はドコモの端末販売の収入が減ったことや、海外のSI収入が減ったことなどが原因と考えられます。営業利益はドコモのスマートライフの増益や、海外収支の改善などにより増えたと言えます。第1四半期には減益76億円でしたが、今回増益になったので好調だと言えるでしょう。
海外の売上高は91億ドルで、前年に比べて7.2億ドル減っています。海外営業利益率は2.9%で、前年に比べて0.7ポイントのプラスになっています。また第2四半期決算における新型コロナウイルスによる影響は、収入では1300億円程度の減少、利益では200億円程度の減少と考えられます。今後は海外SI関連の影響で下期にはさらに減少傾向になることが考えられます。
ここに新型コロナウイルスの第2波が発生していることを加味すると、営業収益は3500億円の減少、営業利益は700億円の減少があることが見込めます。しかし新しいサービス「Remote World」で販売拡大を図っています。このサービスはコロナの影響を考えたもので、サーマルカメラや電子署名サービス、非常用電源ステーション、オンラインサポートツールなどを提供します。これらが上手くいけば、マイナスの影響が縮小することも考えられます。
今後の株価推移予想・投資判断
2021年1月27日のNTTの株価は2698円で株価診断は割高です。個人投資家の予想は売りですが、アナリストの判断は買いで、株価は今後11.16%の上昇が見られると予想しています。ここ2年ほどの株価の推移を見ると、2200円から2800円の間を行き来しているのが確認できます。コロナの影響で20%程下落となった時もありますが、それでもかなり安定した株価だと言えます。国内の需要が多い銘柄であるというのも、株価の安定性の理由です。
さらにドコモの完全子会社化の影響も考えると、今後は3000円台も期待できます。さらに2020年度の1株当たりの配当額は、100円を予定しています。配当率は4%ほどで年々増加しているので、今後も安定した配当があると予想できます。また投資単位が555000円から277500円になったため、買いやすくなっています。株主優待はdポイントがあり、100株以上保有していると保有期間によって1500ポイントまたは3000ポイントが貰えます。株価が安定していることや高配当、投資単位、株主優待などを総合的に考えると、買うのをおすすめできる銘柄と言えるでしょう。
投資する上で想定される当社の事業リスク
NTTは安定した業績で優良な企業と言えますが、裏を返せばあまり成長が見込めない企業でもあります。営業利益のほとんどは国内の事業のもので、その内の大半がドコモが占めているのが現状です。少子化が進んでいる日本の人口は、これからさらに減少していくことが予想されるため、ドコモのような通信事業の需要が大幅に増えることはないでしょう。
しかしNTTの株はほとんど国が所有していることや、企業として倒産することはまずないことを考えれば、成長が見込めないことはリスクと言うほどのものではありません。
まとめ
事業の内容や決算の詳細、株価の推移などどれを見ても、NTTの株は買い時と言えるでしょう。特に1株あたりの投資金額が安くなったので、少額投資でリスクが少なく始められ、初心者の人に特におすすめできます。
また配当金が高配当なので、長期的に安定した利益を出したい人にも向いています。しかしながら現在のコロナウイルスによる世界規模の社会情勢への影響も考え、慎重に判断することが大切です。