【2021年最新版】伊藤忠商事の株価は今後どうなる?今が買い時?

(株式投資アナリティクス編集部)

世界にも類を見ない日本独自の企業形態として知られ、ラーメンからミサイルまで幅広い商品を行う総合商社は、日本企業の中でも優れた業績を維持している点が特徴です。

現在、日本で活動している大手の総合商社は7社に及びますが、そのうちの1社である伊藤忠商事は、赤字を出す競合他社がいる中でも、確実に黒字を確保する等、安定した経営で知られています。

企業・ビジネスの特徴

伊藤忠商事は、1949年12月1日に創立された総合商社で、大阪府大阪市北区及び、東京都港区に本社を構えている企業です。1858年、麻布に関する業務を行っていた初代伊藤忠兵衛が、麻布の持ち下り行商を行うため、同業他社の丸紅とともに創業された経緯を持ちます。全国各地の紡織会社を傘下に治めていたため、繊維部門における売上高が高いという点が、大きな特徴です。この他、食料及び情報通信、保険に金融といった非資源分野でも、他の競合他社と比較して、大きく売上を伸ばしています。

滋賀県犬上郡豊郷町出身の初代伊藤忠兵衛が、兄の六代目伊藤長兵衛とともに、地元で近江麻布類の持ち下り商売を開始し、その後、大阪府の堺市でも行商を行いました。その後、大阪府大阪市中央区に紅忠を開業、本社を移転した後は、1960年代まで大阪府が本社となっていました。東京都を始めとした全国規模への事業拡大のため、東京都港区に東京本社を設立しました。1970年代に大阪本社の機能を東京本社へ移管する形をとり、現在は東京本社と大阪本社が存在する形に至っています。

伊藤忠商事は、「個人と社会を大切にしながら、未来に向かって豊かさを伴う責任を果たしていく」という、経営理念を掲げています。伊藤忠商事の経営理念を果たす上で、先見性、誠実性、多様性に加え、日々の業務に取り組む情熱や挑戦といった、5つの価値観を大切にしている点が、特徴です。初代伊藤忠兵衛は、毎日の商いを行う際に、会社だけではなく、取引に関わる個人や社会環境をも考慮した経営を行う、「三方よし」という考えを持っていました。初代伊藤忠兵衛の「三方よし」を中心とした考えが、現在の伊藤忠商事の経営へと大きくつながっています。

伊藤忠商事は、他の競合他社と比較して、売上高の構造が非資源分野に集中している点において、大きく異なります。非資源分野の中でも、生活消費関連分野が最も高い収益力を誇りますが、代表的なものに、ドール・フード・カンパニーや、ファミリーマートが該当します。食品系では、プリマハムにエビアン、ユーグレナ&ヨーグルト等を取り扱っている他、衣料品系の場合、エドウィンやアディダス、ジョルジオ・アルマーニといったブランドが有名です。

伊藤忠商事の本社に勤務する従業員数は、5大総合商社の中で最も少ない一方、多くの子会社を有しており、グループの子会社を含めると、総合商社の中でも従業員数が大規模となります。また、2015年においては、三菱商事や三井物産を超える最終利益を確保し、一時期ではありますが総合商社のトップへと登りました。

直近の主要な動向

2021年3月の決算報告の場で、伊藤忠商事は最終利益を、2020年度の実績より2割低い、4,000億円と公表しました。業界最大手の三菱商事が、最終利益を未定と公表した中で、多くのアナリストからは「強気の数字だ」という評判が相次ぎました。多くの総合商社が、石油や天然ガスといった資源分野に注力している中、伊藤忠商事は一貫して、非資源分野に注力している点が特徴です。中でも、合成樹脂の取引額が高い推移となっている他、日用品や衛生用品の売上高が堅調な点も、今回の最終利益確保へとつながっています。

加えて、2020年6月には、伊藤忠商事の時価総額が終値ベースで3兆7,649億円に達し、常にトップを維持していた三菱商事の時価総額3兆6,964億円を、創業以来初めて抜き去ました。6月1日までは2社の時価総額がほぼ同額だったものの、2日には伊藤忠商事の時価総額が700億円ほど高くなっていました。また、2日の株あたりの終値に関して、前日比45円50銭高の2,375円50銭と、2パーセント上昇した点も、時価総額トップに躍り出た、大きな要因の一つです。

三菱商事は、原油価格に影響するLNG事業や、原料炭事業といった分野の業績が伸び悩んでおり、2020年5月は、自社株を3,000億円程度消却しています。その一方で、伊藤忠商事が得意とする生活関連分野の株式が軒並み上昇している点も、今回の時価総額逆転へとつながった、最大の要因と言えます。

今後の株価推移予想・投資判断

2021年3月の決算にて、最終利益を4,000億円と修正した伊藤忠商事は、得意とする非資源分野が好調という理由から、今後も高値で株価が推移されると予想されます。メインとしている繊維分野は、アパレル業界の記録的な業績不振もあり、株式の上昇に陰りが見えるものの、食品や通信分野は需要の拡大が影響し、堅調に推移している点が特徴です。伊藤忠商事の通期計画目標に対する進捗率も、63パーセントと高い水準に達しており、他社の決算内容によっては、最終利益でトップに立つ可能性もあります。

2023年には、2020年8月に閉園したとしまえんの跡地に、ハリーポッターをテーマとした、屋内型施設の再開発にも関わります。そういった事業計画もあり、2020年の商社株の中では、唯一上場来の高値を更新している点が、大きな特徴です。通期予想においては、減益を想定しつつも増配を計画しており、将来的な投資先としての有力候補と言えます。

投資する上で想定される当社の事業リスク

伊藤忠商事に株式投資を行う上で、最もリスクが高くなりやすい分野は、繊維事業と言われています。日本国内では、新型コロナウイルスによる外出自粛により、衣料品の売上が大きく激減、アパレル業界では閉店や倒産も相次いているという事情を抱えます。近年は、日本におけるファッション業界の低迷が叫ばれている上、2019年に伊藤忠商事が行った、スポーツアパレル大手デサントへのTOBというような、様々なリスク要因がそのまま、繊維分野に対する投資へのリスク要因へとつながっている点が最大の理由です。

日本の総合商社は、他の業種と比較して市場価値自体は安く推移していますが、三菱商事等の競合他社と比較した場合は、割高となっています。そのため、長期間に渡る業績の成長が見込めない場合、総合商社の中で一番高い伊藤忠商事の株価が、下落するリスクも高まります。

まとめ

新型コロナウイルスといった外的要因に大きく左右される経済状態にあって、決算発表で強気の予想を行う伊藤忠商事は、長期的な投資先としての有力候補となります。

食品や医療等の非資源分野が主流で、そういった関連の株式が高い水準で推移している等、安定した経営環境が最大の理由です。また、時価総額が三菱商事を抜いてトップに立つ、としまえん跡の再開発に携わるといった点も、投資にとって大きなメリットと言えます。