
2020年暮れから始まった「リスクオン」相場の後、「米ドルは売られ過ぎ、株式は買われすぎ」と囁かされています。
投資家のポジショニングが偏りを見せており、米ドルが買われるトレンドへの転換と株式市場の短期的な下落が近いうちに待ち構えている可能性があるとの主張もあります。
しかしながら歴史的なサイクルを踏まえて中長期的な視点で考えると、「ドル」は下落し続ける可能性が高いと言えます。現在のドル安サイクルは今後数年間続く可能性を秘めています。
米ドルが更に下落するテクニカル:歴史的なサイクル
米ドル指数は、世界各国の主要通貨と比較した、米ドルの価値を示しています。1970年以来、米ドルの相対的価値は、以下の図に示される通り、明確な期間で上昇・下降をサイクル的に繰り返してきました。
【米ドル・上昇下降サイクル】

図に示されているように、これまでのドル安が上昇・下降するサイクルは、トレンドが転換するまで平均して約8年続いており、最長は約10年でした。
現在のドル安トレンドはドル安サイクルからまだ4年程度であると想定されます。そのため、サイクルの長さが十分では無く、まだドル安が継続する可能性が示唆されています。
米ドル安が継続するファンダメンタル要因
歴史的な米ドルのサイクル論は、あくまでヒントであって分析を完了するほど十分ではありません。今後もドル安が続く可能性を示唆する要因は他にもあります。
まずFRBは金融緩和モードを継続する旨を明確に宣言しています。米ドルが安くなる非常に強い要因です。
量的緩和(QE)によってFRBは、米ドルの強さを犠牲にして、マネタリーベースを膨らませることで、成長と雇用を節約することを選択しました。
長期的に見ると、FRBがこのように豊富なマネタリーベースを維持すれば、米ドルはさらに下落すると予想するのが妥当です。
次に、コロナウイルスによる深刻な経済的影響により、前例のない程度に政府の財政支出が必要となっており、貿易赤字と併せた「双子の赤字」の急増は、米ドルにとって大きな逆風になっています。
「双子の赤字」の状態では、マクロ的に米ドルが売られることに繋がり米ドルが下落する圧力が強く働きます。
まとめ:どのような投資行動への示唆が想定されるか?
歴史的なサイクルや直近のファンダメンタルズを考慮すると、通貨を取引する投資家にとっては、ドルを売る方がより高いリターンを得られる可能性があります。
またドル安がもし続けば、米国株以外の、新興国株が今後堅調に推移する可能性があります。新興国通貨の強さ(米ドル安の裏返し)は、ドルベースの投資家の新興株(米ドルでの価格設定)に対するリターンを押し上げ、魅力的な投資先となるためです。
(編集・株式投資アナリティクス)