この記事では「トランプ砲」、つまりトランプ大統領がツイッターで発する発言の影響力について分析しています。

トランプ大統領は政治・経済・金融政策から個別企業についてまで、幅広い範囲を”攻撃範囲”としてツイートしています。

つい最近も以下のようなツイートをして、株式市場を始めとする世界の金融市場へ大いにインパクトを与えています。

世界で最も発言力を持つアメリカ大統領が放つ「トランプ砲」ですが、株式相場へどれくらいのインパクトがあるのか気になったので、「トランプ砲」で企業の時価総額がどれくらい吹き飛んでいるのかを試算してみました。

そもそも「トランプ砲」とは

株式市場を始めとして全世界の金融市場に大きなインパクトを与えるトランプ大統領の発言です。

ツイッターでかなりの頻度で、とても大事な事項について発言しますが、金融市場へ大きな影響力を持っています。

ここでは、株式市場への影響について触れてます。

「トランプ砲」の攻撃範囲

トランプ大統領は、公式の場のみならずツイッターで自身の考えをつぶやきます。賛否両論ありますが、これまでにはあまり見られなかったコミュニケーションの方法です。

トランプ大統領の発言は、政治・金融政策・外交・企業など多岐のジャンルに亘ります。直接的あるいは間接的に株式市場へインパクトを与えています。

過去に個別企業へ発射した「トランプ砲」の威力

では実際に、トランプ砲はどれくらいのインパクトを与えているのでしょうか。

日本株の例:トヨタは5秒で1,400億円の価値が吹っ飛んだ

日本最大の時価総額を誇る「トヨタ自動車」は、トランプ砲を直接被弾した銘柄です。トランプ大統領が気にするとはさすがトヨタ。

ただその影響は笑えません。

2017年1月のことでしたが、その時のトランプ大統領のツイッターがこちら↓

(訳)
トヨタがメキシコに新しい工場を建てると言っている。アメリカで売るカローラをつくるためだ。そんなばかな!アメリカに工場を建てるか、多額の関税を払え!

出典:Twitter

「America first」の掛け声通り、保護主義的な政策を邁進するトランプ大統領による、トヨタ批判のツイートです。

このツイートの次の瞬間トヨタの株は一気に売られ、時価総額はおよそ1,400億円吹っ飛びました。その間たった5秒。

その後半年間、トヨタの株価は2割ほど下落して低迷し、半年で時価総額がおよそ1.4兆円失われました。

世界最強のアメリカ大統領が他国の企業を名指しで批判し、株価下落のトリガーを引くという出来事は、当時の関係者に衝撃を与えました。

【参考】IT media NEWS

米国株:Amazonの企業価値が一瞬で6,000億円消し飛んだ

ターゲットは日本をはじめとする他国企業だけではありません。

自国内の企業にも遠慮なくその攻撃は及びます。

アメリカ最大のECサイトを運営するAmazonもトランプ砲の被害を受けた企業です。消し飛ばされた額がトヨタの更に上をいっています。

以下がAmazonを批判した時のトランプ大統領のツイート↓

(訳)
Amazonは税金をちゃんと支払っている小売業者に損害を与えている。米国中の町・市・州が傷ついている。多くの職が失われているんだ!

このツイートが発信された次の瞬間、アマゾンの株価は滝のように急落しました。

出典:Mashable Asia

失われた時価総額はなんと6,000億円。

ツイッターで呟いたたった2行そこそこの文字列が瞬く間に企業価値を奪い、その時の株主に被害を与えています。

全世界の株式相場への「2019年製トランプ砲」の威力【500兆円超】

過去には個別企業を名指しで批判し、企業価値を喫損させてきたトランプ砲。しかしトランプ砲の神髄は、個別銘柄への攻撃ではありません。

威力を数値化すると、個別銘柄に与えるインパクトを遥かにしのぎます。影響が及ぶ範囲が広いので当然ですね。

2019年で特に大きなインパクトがあった2019年5月のトランプ砲で、全世界の株式市場でどれほどの時価総額が吹き飛んだか、試算してみました。

2019年5月:GWトランプ砲

日本ではまだゴールデン・ウィークでお休みの最中、トランプ大統領は中国からの輸入品に対する関税引き上げについてツイートしました。

(訳)※ポイントだけ翻訳
(~中略)2千億ドル分の中国からの輸入品は今は10%だが、次の金曜日から25%に引き上げる。(~中略)中国との貿易交渉は継続しているが、進みが遅すぎる。中国が再交渉しようとしているからだ。ダメだ!

まだまだ記憶に新しいですね。米中貿易摩擦の交渉がなかなか進展を見ない中、業を煮やしたトランプ大統領が放った一撃です。

米中貿易摩擦について詳しくないかたは宜しければこちらどうぞ。
【米中貿易摩擦まとめ】分かりやすく解説。今後の株式市場への影響は?

このトランプ砲が、全世界の株式市場にどのくらいのインパクトを与えたのか、試算してみました。以下がトランプ砲によって失われた全世界の上場企業の時価総額総計です。

  • 1日:80兆円(2019年5月7日に失われた時価総額)
  • 1か月:531兆円(2019年5月中に失われた時価総額)

期間について、瞬間的なインパクトとトランプ砲1発の総合的なインパクトを分けて考えるために1日と1カ月に分けています。

「1日」というのはトランプ砲が発射された翌営業日のインパクト、「1か月」はこちらのツイートによる影響での下落が一服した(と解釈できる)6月4日までの1か月を指します。

下落要因は完全にこのツイートだけということではないのは重々承知していますが、当時の市場のメインテーマは米中貿易摩擦であったことから、大きな要因はこのツイートであったと解釈して数値化しています。

具体的な算出方法は以下の通りです。

  • 全世界上場企業の時価総額(2018年末ベース)×eMAXIS(投資信託)の下落率

取得可能な数字で試算しています。「全世界上場企業の時価総額」は世界銀行が公表している数字で2018年末ベースの数字を利用しています。

「eMAXIS」とは、三菱UFJ国際投信が運用している全世界の株式市場を対象にした投資信託であり、この投信の対象期間中の下落率が、全世界の株式市場の下落率として見立てて採用しています。これで計算すると、

  • 1日:
    68.654兆ドル×▲1.1%×106円(/1ドル)=およそ80兆円
  • 1か月:
    68.654兆ドル×▲7.3%×106円(/1ドル)=およそ531兆円

あくまで概算ですが、上記の数値で計算すると1日でおよそ80兆円、1か月で530兆円の時価総額がふきとんだ計算になります。

投資家視点で考えると、トランプ砲後の1か月間で保有株式の評価額が全世界で530兆円下がってしまっていることになります。

数字が大きすぎてピンと来ません。。。

とにかく凄い数字ですね。他の例で言い換えると1か月の金額は、

  • 日本のGDP(546兆円/2017年)に匹敵
  • トヨタ自動車(時価総額22兆円)が約24社分買える
  • もう少しで、日本の全上場企業(約560兆円)が買える

数値化すると、インパクトの大きさが良く分かります。一国の大統領のたかだか1つのつぶやきがこれほどの威力を持っているとは驚きです。

【参考外部リンク】World Bank

トランプ砲に対する備え

いち個人投資家として、どうトランプ砲に備えるか。

  • トランプ砲が発射されるまでノーポジ or ポートフォリオを縮小して待機
  • トランプ砲が発射された後もしばらく待機
  • 下げに一服感が出た or ポジティブなトランプ砲が発射されたところで買い

最も良策と考えられるのは以下のような対応ではないでしょうか。 あくまでトランプ砲起点なので「トランプ砲トレード」と言える作戦ですね。

トランプ砲によって株式相場が下落するのを待って、各銘柄が割安になったところで買いで入るという戦略です。 常套手段ですね。

まとめ:今後もトランプ砲からは目が離せない

この記事では、トランプ砲によって失われた時価総額を取り上げましたが、トランプ砲は株式相場にネガティブな影響を与えるだけではありませんのでご注意を。

トランプ砲の威力を数値化してみましたが、計算していて改めてインパクトの大きさを実感しました。こうしたインパクトの大きさを見ても、トランプ大統領のツイートからは目が離せません。

2019年8月の初旬にも、冒頭に掲載したトランプ砲によって全世界の株式市場が下落しています。

「一国の大統領のつぶやき」がこれほど大きく株式市場を揺るがす、ということはこれまでには無かったと思いますが、この事実は今後どのような影響を与えていくのでしょうか。必見です。