世界の株式市場を揺るがす米中貿易摩擦。

新聞やテレビニュースを賑わせていますが、以下のように感じている方も多いのではないでしょうか?

「何だかおおごとみたいだけど何のことか良く分からない…」
「ずいぶん長く続いているけど、そもそもどんな経緯だったか良く覚えていない」
「結局、相場にどんな影響があるの?」

この記事では、2018年7月から追加関税措置が発動し本格化している米中貿易摩擦について、その経緯や市場への影響を分かりやすくまとめ、お伝えします。

2019年5月5日には、トランプ大統領がTwitter上で、追加関税の第3弾で10%の課税を課していた2,000億ドル規模の中国輸入品に対する税率引き上げを示唆しました。

上記は5月10日に実効となり、同日に第4弾として残りの輸入品に対しても関税をかけることを表明しています。

中国はその報復措置として、6月1日付けで輸入品約600億ドル(約6兆5000億円)相当に対して25%を上限に引き上げました。

米国による追加関税、中国による報復措置のスパイラルが続いており、貿易摩擦はエスカレートの一途をたどっています。

ダウ平均株価や日経平均への影響はあるものの、現在株式市場への影響は一服感が出ています。

市場への影響を考えると貿易戦争の動向は目が離せず、注視が必要です。

【まとめ】米中貿易摩擦の動向

  • 第4弾関税引き上げ(3,000億ドル分)を計画中
  • 6月のG20サミットにおける米中首脳会談で協議進展期待
  • トランプ大統領の発言で協議進展の期待感が出ており市場の見方はやや楽観的に
  • しかし貿易摩擦問題の長期化は日本経済を含め世界経済の成長に停滞をもたらし、株価に悪影響がある可能性

まとめ①:米中貿易摩擦とは?分かりやすく解説

米中貿易摩擦は、2017年1月にアメリカ大統領に就任したトランプ氏が中国に対し、貿易不均衡是正のために仕掛けた外交戦略の一つです。

アメリカと中国の貿易問題であり、両国間で是正のための協議が進んでいたものの、遂に2018年から両国間で追加関税をかけ始めたことが原因で泥沼化しました。

つまり、経済が急拡大を続ける中国と19世紀から世界に君臨する王者である米国の覇権争いと言えます。

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要するにトランプ大統領がアメリカの貿易による利益を増やそうとして中国にケンカをふっかけている、ということになります

まとめ②:米中貿易摩擦の原因

貿易摩擦におけるアメリカ側の主張は、中国経済に対するものと政治体制に対するものの大きく2つに分かれます。

中国経済への批判

  • 米中間の貿易不均衡(米国が大幅な貿易赤字)
  • 「中国製造2025」における産業政策
  • (外資企業の技術移転強要・輸出補助金提供 等)
  • 中国の知的財産権の問題
  • 中国による為替介入・為替操作

中国政治への批判

  • サイバー攻撃やスパイ活動
  • 中国による帝国主義的な外交活動
  • 中国国内におけるキリスト教・イスラム教などへの弾圧政策
  • 人権を侵害する管理・監視政策
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分かりやすく言うと、経済・政治の面で中国をけん制したいのです

こうした建前を元に、アメリカから中国へ仕掛けるかたちで米中貿易摩擦の火ぶたは切って落とされます

まとめ③:米中貿易摩擦に関する経緯

【貿易摩擦”開戦”後の主な出来事まとめ】

戦争前夜:2016-2017年

そもそもの火種は、トランプ大統領が勝利を収める2016年の選挙期間中から存在していました。

この時期からトランプ大統領は、アメリカと中国との間での貿易摩擦を大きな問題として言及しています。

2017年、トランプ大統領の当選後、習近平国家主席との米中首脳会談が行われ貿易不均衡を是正するための「米中包括経済対話メカニズム」が立ち上げされるも進展を見ないままにとん挫しました。

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「アメリカ第一!」を実現しようとしたわけです。

追加関税措置発動直前:2018年6月まで

2018年に入り、米中貿易摩擦の攻防は加速します。

1月にアメリカが「太陽光発電パネル」や「洗濯機」に追加関税の発動を発表したことを皮切りに、貿易戦争の様相を呈していきます。

3月にはアメリカが追加で「鉄鋼」「アルミニウム製品」に追加関税を実施する旨を発表。

これに対し、中国はアメリカから輸入する128品目の製品へ追加関税を課す報復措置を公表します。

その後、何度か米中での貿易摩擦解消のための閣僚級会議が開催されます。

しかし6月、アメリカは同年7月から中国からの輸入製品1,102品目に対して翌月から500億ドル(およそ5兆円)規模の追加関税を課すと発表します。

中国も対抗措置として、659品目に対して追加関税措置を実施すると公表します。

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「やられたらやり返す」のいたちごっこです

貿易摩擦の開戦(追加関税第1弾~第3弾):2018年7月~2018年12月

2018年7月、アメリカはついに818品目・340億ドルの輸入品に対して追加関税措置を発動し、中国も追随し同規模の報復関税を課します。

8月には、米中両国が追加関税第2弾をそれぞれ160億ドルの規模で発動。

続いて9月には第3弾が発動。アメリカが5745品目・2000億ドル規模の輸入品に、中国が5207品目・600億ドル規模の輸入品に対して追加関税を課します。

更に11月にはトランプ大統領から全品目・2670億ドル規模を対象にした追加関税第4弾の実行が示唆されます。

米中首脳をはじめ政府間で会合が継続されますが2018年中には完全合意には至らなかったものの、12月には経済制裁や報復関税を「休戦」することで合意します。

収束に向けた協議:2019年1月~2019年4月

2019年に入っても首脳級・閣僚級の協議が継続。

2月末には、トランプ大統領から元々3月から発動と宣言していたアメリカによる報復関税第4弾を延期すると発表されます。

4月末にかけては、 制裁関税の撤廃時期や合意内容実行のフレームづくりで詰めの協議を実施する、との見通しが報道され貿易戦争の緩和期待が高まりました。

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それにあわせて全世界の株式市場でも楽観ムードがひろがり株価が上昇しましたね

貿易摩擦の加速(追加関税第4弾の発動懸念):2019年5月~

期待の高まりとは裏腹に5月5日、トランプ大統領はTwitterで、中国からの輸入品2,000億ドル分に課している追加関税率を10%から25%へ10日に引き上げる方針を示唆しました。

※出典:トランプ大統領Twitterアカウントより抜粋

トランプ大統領は、協議の進展が「遅すぎる」と不満を漏らし、関税引き上げの脅しをかけています。

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ゴールデンウィーク最終日にこのニュースを見てびっくりしました

5月10日には、25%の関税が実効化。

更に追い討ちをかけるように残りの輸入品に対しての関税を引き上げる手続きに入ったとしています。

これに対し、中国側は抗戦の姿勢を示しています。

報復措置として、600億ドル規模の米国輸入品に対し、6月1日付で追加関税を最大10→25%へ引き上げました。

中国財政省が発表した声明は以下の通りです。

対象は米国輸入する5140品目、追加関税の調整は、米国の一国主義と保護主義への対応。米国が二国間の貿易および経済協議の正しい軌道に戻り、中国に歩み寄ることを望む

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/05/60025.php

米国による追加関税強化、中国による報復措置のスパイラルが続いており、貿易摩擦はエスカレートの一途をたどっています。

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要するに米国が関税を少しずつ上げていくのに対し、中国が仕返しで関税を上げていくということが繰り返し起きている、という状況です

まとめ④:米中貿易摩擦の影響

世界経済への影響

貿易摩擦による追加関税合戦で、世界経済への悪影響が強く懸念されています。

OECDの2018年末時点の試算によると、もし米中が第4弾の追加関税措置を発動した場合、2021年にかけてアメリカは▲1.1%、中国は▲1.3%、世界は▲0.8%GDPが下落する、と予測されています。

またBank of Americaのチーフエコノミストは、中国の成長率が6%を割り込み”悲惨な成長環境”に陥る、との予想を出しています。

日本経済への影響

日本経済、特に日本企業への影響は大きく3点、考えられます。

1点目は、中国国内経済の景況悪化です。中国の対米輸出が関税引き上げによって減少することで、中国企業の業績悪化⇒中国国内の景気悪化が起こります。

これにより輸出関連企業を始めとして日本企業の中国における業績が停滞する可能性が高まります

2点目は日本企業の中国からの輸出減少による業績悪化です。

中国に生産拠点を持つ日本企業は多く存在します。中国から米国への輸出に関税がかかると、日本企業が中国で生産した製品の対米輸出が減少します。

特に影響が大きいのは、日本を代表する産業である自動車業界です。トヨタを始めとする自動車業界の業績が悪化すれば、国内経済への悪影響も予想されます。

3点目は、世界的な企業投資の減退です。世界で最大級の市場を誇る中国の景気が悪化すれば、先行き不透明感から世界中の企業が設備投資等の投資を控える可能性があります。

そうすると、産業機器関連の日本企業の輸出が減少する可能性が高まります

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はっきり言って、だれも得しないです。トランプ大統領が自分の公約を守りたいだけ

株式相場への影響

世界経済の成長に停滞をもたらす米中貿易戦争の影響は、株式相場にネガティブなインパクトを及ぼしています。

特に、直接影響を受けるアメリカのダウ平均株価が大きく動いたのは、2018年2月と2018年12月です。日経平均も連動するように下落しました

貿易摩擦によりダウ平均株価が大幅下落

出典:SBI証券

貿易戦争への懸念が顕在化した2018年2月~3月に、上り調子だったダウ平均株価が変調します。

特に、2月2日の始値:26,129ドル⇒2月5日の終値:23,989ドルとたった2営業日で▲8.2%も下落しました。

また2018年12月には、12月4日の始値:25,586ドル⇒12月31日の終値23,313ドルへ▲8.9%も下落しています。

日経平均株価も連動して下落

出典:SBI証券

日経平均株価もダウ平均株価と連動して下落しています。

まとめ➄:今後の動向予測。引き続き国内株式相場は軟調?

直近では、関税税率が引き上げられ、追加関税の第4弾までもが示唆されており、貿易摩擦が激化しています。

こうした動向を受け、ゴールデンウィーク明けの株式市場は軟調に推移しました。

5/13~17週について、週初は中国の報復関税措置を受けてダウ平均や日経平均は下落したものの、週後半は買戻しが入っています。

今後、戻す局面もあるでしょうが、貿易摩擦問題がさらに加速すれば、ダウ平均株価をはじめ株式市場はネガティブに捉える可能性が高いでしょう。

海外メディアやアナリストの間では、株式相場への悪影響を示唆するコメントが拡がっています。

Patrick Chovanec, chief strategist at Silvercrest Asset Management, warned that Trump’s move could disappoint investors and push -markets down. “The prospect of higher and broader tariffs was one factor that drove markets down in the fourth quarter of 2018, but markets have since come to believe that some sort of deal was imminent to avoid them,” Chovanec said.

シルバークレストアセットマネジメントのChovanec氏は「トランプ大統領のこうした動きは、投資家を失望させ市況を悪化させる可能性がある。2018年の第4四半期は、より高く幅広い関税は市況を悪化させる一つの要因だったがその後、市場では貿易戦争のこれ以上の加速を回避する可能性を信じてきた。」と述べた。

英誌:The Guardian https://www.theguardian.com/business/2019/may/05/trump-escalates-trade-war-with-china-with-plan-to-raise-tariffs

Trump’s comments could rattle markets on Monday after the stock market has been in full swing following surprising first quarter GDP growth and a strong April jobs report.

トランプ大統領のコメントは、好調だったGDP成長率と雇用統計の結果の後で上昇した株式市場を揺るがす可能性がある。

米国メディアCNN https://edition.cnn.com/2019/05/05/politics/trump-china-additional-tariffs/index.html

※出典:investing.com

足許では、6月のG20サミットでの米中首脳会談による協議進展や、トランプ大統領の「協議が進むだろう」という旨の発言により、市場では楽観論が出ています。

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しかしながら中長期的にネガティブなインパクトが大きいはずの米中貿易戦争の動向は予断を許さず、株式市場への影響とともに注視が必要です

【参考リンク】G20財務相会合閉幕 共同声明「貿易摩擦にさらなる行動を」

【参考リンク】米中経済貿易協議についての中国側の立場について

【参考リンク】中国、最悪シナリオで成長率6%割れも

【参考リンク】米、対中関税を引き上げか 22兆円分10%から25%

【参考リンク】米中貿易摩擦の行方と世界経済への影響

【参考リンク】米中貿易戦争が日本経済に与える悪影響

【参考リンク】トランプ氏、対中関税25%に上げ表明、最終版で威嚇か