この記事では、日本国内の自動車株の見通しについて解説しています。

自動車株といえばトヨタ、ホンダ、日産などですが、株価推移・業績あるいは配当利回りやPER・PBRなんかをチェックしていると、配当利回りが高かったり割安感出ていたりしますよね。

そんななか自動車株の今後の見通しについて、どう思いましたか?もしかしたら、

「すごい割安感出てる」
「トヨタの利回りが3%超えてる、日産なんて8%超えてる!」
「超大企業だし事業は安定しているから大丈夫だろう」

と思われたかも知れません。

悪いことは言いません、今は自動車株を買うのはやめておきましょう。

あくまで「今は」ですが自動車株を買うのは、「落ちるナイフを掴む」に等しい行為です。

自動車株は買うべきではない、という根拠をこの記事でご説明します。

※投資は自己責任でお願いします
※株価や配当利回りなどの数値は記事更新時点版です

自動車株を”ぱっと見”した時に見えること

自動車株をスクリーニングしていくと、けっこうな配当利回りになっていて、割安感が出ていることにすぐに気づくでしょう

大手自動車株の配当利回りとPER
出典:各種データより当サイト作成

【大手自動車メーカーの配当利回り】

  • トヨタ:3.18%
  • ホンダ:4.25%
  • 日産:8.24%
  • スズキ:1.85%
  • マツダ:3.49%

配当利回りを見て魅力的に思うかも知れません。

しかしなぜこんなに配当が高いのか?殊更、これらの大手自動車メーカーが急激に配当を増やしてくれたわけではありません。

次に割安感の指標としてPERを見てみます。

【大手自動車メーカーのPER】

  • トヨタ:10.65倍
  • ホンダ:7.55倍
  • 日産:8.48倍
  • スズキ:10.12倍
  • マツダ:13.12倍

割安な水準に思えますね。しかしなんでこんなに配当利回りが高くなり、PERが安くなっているのでしょうか?

答えは、シンプルに株価が下がり続けているからなんです。それも日経平均株価を大きく上回るベースで下がり続けています。

代表的な自動車株の株価推移

株価が下がっていると言いましたが、まず以下の図をご覧ください。

自動車株と日経平均の推移比較(2018年1月~2019年8月)

大手自動車株と日経平均株価の推移
出典:株式投資メモ様のデータから当サイト作成

この図は、日経平均株価と国内トップ自動車メーカー5社の株価パフォーマンスを表したものです。5社は「トヨタ」「ホンダ」「マツダ」「日産」「スズキ」です。

期間は2018年初めから現在(2018年8月2日)までとなっており、2018年1月4日の株価を1として、その後の推移を指数化しています。

これを見ると、以下のことが浮き彫りになります。

トヨタ以外の自動車株は、日経平均のパフォーマンスを大きく下回っている

日経平均株価さえ、2018年1月初めと比べると若干下落してしまっています。大手自動車会社は、それを遥かに上回る下落率を見せています。

以下が具体的な数字です。

自動車株のパフォーマンス比較(2018年1月と2019年8月の株価倍率)
  • 日経平均株価:0.89 (▲0.11)
  • トヨタ:0.93 (▲0.07)
  • ホンダ:0.66 (▲0.34)
  • マツダ:0.65 (▲0.35)
  • 日産:0.61 (▲0.39)
  • スズキ:0.59 (▲0.41)

つまり、ホンダ・マツダ・日産・スズキは日経平均のおよそ3~4倍の下落幅を記録している、ということです。トヨタですらトントン。

驚くべきは、カルロス・ゴーン氏に関わる不祥事やルノーとの経営統合でゴタゴタしている日産と、トヨタを除く他の自動車大手のパフォーマンスが変わらない、というところです。

それはつまりどういうことか。

TOSHATOSHA

端的に言ってしまうと自動車株全体に対して、共通して売られる要因が存在しているからです

自動車株を買ってはいけない!3つの要因

その共通して売られる要因というのは何なんでしょうか?それが自動車株を買ってはいけない理由に直結します。

しかしながら、もう株価推移だけでこう思ってしまったかも知れません。

「自動車株の未来は暗そうだな…」
「自動車株はもうオワコン」

あるいは逆に、こう思われる方もいるかもしれません。

「いや、それは過去の話であってこれからは分からないじゃないか」

その通り、過去と将来は別の話です。

TOSHATOSHA

しかしながら大手自動車メーカーにとっては当面厳しい状況です。構造的にも一時的にも逆風が吹いています

以下は、台湾の調査会社であるTrendForceが2019年4月に公表した、自動車販売台数の将来予測です。

【グローバルベースでの自動車販売台数の予測】

世界の自動車販売台数の推移
出典:TrendForce

Global research institute TrendForce asserts in its latest Global Automotive Market Decode for 1Q report that the global automotive market scale is predicted to reach 94.4 million in shipments 2019, a 0.8% decrease compared to 2018. Despite this drop in market scale, car manufacturers are hoping to spur market development by turning to the electric vehicle market. Electric vehicle shipments are predicted to arrive at 5.15 million in 2019, reaching a YoY growth of 28%. YoY growth of new energy vehicles alone ( excluding hybrid electric vehicles) is expected to hit 51%.

出典:TechNews

2019年の世界の自動車販売台数は、2018年対比で▲0.8%の9,440万台に減少すると予測されています。ちなみに2018年も前年対比で販売台数が減少しており、2年連続のマイナス成長です

これまで右肩上がりで成長してきた自動車市場ですが、2018年に続き2019年も厳しいと見られているようです。

このように販売台数の減少が自動車株のパフォーマンスを悪化させています。

自動車業界にいったい何が起きているのでしょうか。要因を検証します。

要因①:米中貿易摩擦による景気減退

第一に、米中貿易摩擦が米国や中国市場に暗い影を落としています。

米国・中国における景気が悪化し、消費者心理が冷え込むことで、自動車販売が減少しており今後も減少する見通しです。

米中貿易摩擦は更なるヒートアップ、長期化の様相を呈しており、自動車業界に対しても大きな爪痕を残すでしょう。

米中貿易摩擦の経緯や全体的な影響についてはここでは説明しませんが、詳しくは以下で解説しています。

【内部リンク】
【米中貿易摩擦まとめ】分かりやすく解説。今後の株式市場への影響は?

要因②:景気減退を受けた大手自動車メーカーの業績悪化

自動車販売の落ち込み、貿易摩擦の激化・長期化を受けての「御三家」の決算はどうだったのでしょうか。

最新の2019年4-6月期決算を見てみます。

トヨタ

出典:トヨタ自動車 2020年第一四半期決算

トヨタ自動車が2日発表した2019年4~6月期の連結決算(米国会計基準)は、純利益が前年同期比4%増の6829億円だった。4~6月期として過去最高を更新した。グループの販売台数が増えたほか、値上げや原価低減が寄与した。営業利益は9%増の7419億円だった。

売上高は4%増の7兆6460億円と4~6月期として過去最高を更新した。グループの世界販売台数は欧州やアジアでの販売が増え、4%増の270万9000台だった。

20年3月期通期の連結業績予想は想定為替レートを円高方向に修正したのを受け、下方修正した。売上高は前期比2%減の29兆5000億円、営業利益は3%減の2兆4000億円、純利益は14%増の2兆1500億円を見込む。従来予想はそれぞれ1%減の30兆円、3%増の2兆5500億円、19%増の2兆2500億円だった。

出典:日本経済新聞

ホンダ

出典:ホンダ 2020年度第一四半期決算

4―6月期の売上高は0.7%減の3兆9962億円、純利益は29.5%減の1723億円だった。世界の四輪販売は1.2%増の132万1000台だった。

会見した倉石誠司副社長は「米国やインドでの四輪車販売台数減少などで営業利益は減益だったが、為替影響や一過性の影響を除くと、前年同期比増益」と説明した。

出典:ロイター

日産

出典:日産自動車 2020年度第一四半期決算発表

7月25日に決算を発表した日産自動車は米国市場が引き続き振るわず4-6月期の営業利益が99%減の16億円となり、1万2500人規模の人員削減に踏み切る計画を明らかにした。

出典:Bloomberg

さすが日本最高の企業の一つトヨタ。こんな逆風下でも第1四半期の過去最高益を更新しました。しかしそんなトヨタでも、2020年通期では売上減収と営業利益減益を見込んでいます。

一方でホンダ、日産はかなり厳しい決算です。販売台数の減少・規制対応・為替影響などで大幅な減益を計上しました。

これでは、株価が上昇するどころの騒ぎではありませんね。

要因③:円高による為替差損の拡大

要因①で説明した米中貿易摩擦によってリスク回避的な円高が進むと、日本の大手自動車メーカーは為替差損が拡大します

ドル/円の為替レートが1円動くとどのくらい収益に影響があるかご存知ですか?例えばトヨタでいくと、数百~数千億円ほど営業利益を下押しします。

こういった現状やさらなるリスク要因を考えると、自動車株の業績が低調の一途を辿ることは想像にかたくありません。株価も上がりません。

そんな中、他にも買うことができる銘柄があるときに、自動車株をわざわざ買いたいと思ういますか?

TOSHATOSHA

買いたくないですよね。。。市場に参加している人はみんな同じことを考えます

トヨタにしたって、確かに業績は好調に見えますが、他にも成長銘柄や高配当な銘柄がある中でわざわざ食指を動かす必要はないですよ。

まとめ:自動車株はいま買うな

見てきた通り自動車株は、構造的に業績悪化に向かう状況に置かれています。

従って、いま敢えて自動車株に手を出しても妙味はありません。それどころか冒頭でも書いた通り、「落ちるナイフをつかむ」に等しい行為です。

トヨタ、ホンダ、日産のような自動車完成メーカーだけではなく、部品メーカーも同様です。例えば以下のような銘柄です。

  • 3116 トヨタ紡織
  • 5949 ユニプレス
  • 6201 豊田自動織機
  • 6473 ジェイテクト
  • 6902 デンソー
  • 6995 東海理化電機製作所
  • 7251 ケーヒン
  • 7259 アイシン精機

自動車株ではなく、もっと有望な銘柄を探しましょう。